数学をめぐる 3 つの物語

先月出た結城さんの数学ガールシリーズ最新作「ミルカさんとコンボリューション」.

ようやく読む暇が出来た.



実は 1 週間くらい前,職場の図書室で偶然こんな本をみつけて,思わず借りてしまった.各章のあたまに大きな岩の絵が書いてある (表紙と同じもの.これは Knuth の奥さん作らしい).A (Alice) と B (Bob) という 2 人の登場人物のダイアログによる戯曲形式で,とっかかりやすいので前半はさくさく進んだが,分数がでてきたあたりでちょっと数学のほうがついてけなくなった(激ぉ.



内容は,Conway の理論をもとに,聖書の天地創造になぞらえて数の体系を作って行く話 (が書かれた石版を男女が発見して解読していく話).Surreal numbers (超現実数,超実数) というのは実数の拡張版みたいなもので,無限大ωや無限小εもちゃんと数として扱える.ω^ω^ω^…みたいなとんでもない数も出て来る.ありとあらゆる数が,いくつかのシンプルな定義と定理から爆発的に生成される様はビッグバンのようでもあり,イーガンの小説のようでもある.



一応,男が女にプロポーズしてみたりそういうストーリー性はあるんだけど,おまけみたいな感じで,やっぱりミルカさんシリーズの文学性にはかなわない.ただ,Knuth数学教育に対する考えみたいなものが垣間見られてけっこう面白かった.



これを読んだあとでミルカさんを読むと,やっぱうまいなーと思う.ていうか,乗せられまいぞ,乗せられるものか,とか思いつついつの間にかすっかり乗せられている (何に?) 自分,みたいな.ツボをよく心得ておられるというかwww.

それにしてもコンボリューション,面白いなあ.Fourier 変換や Laplace 変換に対してコンボリューションが積になる,というのは有名だけど,母関数の係数に関しても積になるのか.ふむ.Maclaurin 展開でも Fourier 展開でも,基底で展開してればみんなそうなるのか??



3 つの物語,とタイトルに書いたが最後はこれ.

先日の奈良出張 [2006-02-01] の帰りの新幹線の中ですぐに読み終えた.エレガントな証明でも読み終えたような読後感.