a^b = b^a の有理数解
先月,「a^b = b^a を満たす有理数解の条件は?」という問題を紹介した [2005-11-9].問題提起だけして (元々はある高名な先生から出された問題) ほったらかしてたのだが(ぉ,数日後,KND さんという方から丁寧な解答を頂いた.
何回かメールのやりとりの後に,その解答をここに転載してよいかお聞きしたところ,快諾して下さったので,ここに載せる次第.…って,あれからもう 1 ヵ月近く経ってしまいました(激ぉ.遅くなって申し訳ないです.
厳密な証明は意外と厄介だったり.ちなみに,N が 1 の時が 2^4=4^2 に相当しますね.
有理数解は (a, b) = ( ((N+1)/N)^N, ((N+1)/N)^{N+1} ) (N: 整数、N≠0,-1) に限る. (証明) a = 0 または b = 0 の場合は明らかに a^b≠b^a であることから a, b≠0 である。 b/a =: R と置くと、a と b が有理数であることから R も有理数 であり、R≠0,1。また、「a^b = b^a」より「b = a^R」であること が、R の定義より「b = Ra」であることがそれぞれわかり、 a(a^{R-1}-R) = 0 が導かれる。a≠0 より、a と b は以下のように定まる。 a = R^{1/(R-1)}, b = Ra = R^{1+1/(R-1)} = R^{R/(R-1)} N := 1/(R-1)(≠0,-1)が整数であれば a = R^N と b = R^{N+1} は有理数。このときは R = (N+1)/N であり、R が有理数だという 条件にも反していない。したがって (a, b) = ( ((N+1)/N)^N, ((N+1)/N)^{N+1} ) は a^b = b^a の有理数解を与えている。 次に、1/(R-1) が整数でなく、a = R^{1/(R-1)} が有理数になるよ うな有理数 R が存在すると仮定する。以下、この仮定から矛盾を 導き出す。 1/(R-1) は有理数なので、1/(R-1) が 1/m の整数倍となるように 2 以上の整数 m をとることができる。そのような m のうちで最小 のものを M とする。 1/(R-1) =: n/M とすると、M の最小性より gcd(n, M) = 1 であり、 R = (M+n)/n。このとき、a = R^{n/M} が有理数になるのは R^{1/M} が有理数のときに限る。実際、n>0 のときは a = ((M+n)/n)^{n/M} を既約な整数比表現 S/U と表記すると、(M+n)^n/n^n = S^M/U^M で、 両辺の分母も分子も整数の nM 乗である。(M+n)^n/n^n =: s^{nM}/u^{nM}、 つまり (M+n)/n =: s^M/u^M と置くと R^{1/M} = ((M+n)/n)^{1/M} = (s^M/u^M)^{1/M} = s/u であり、R^{1/M} が有理数であることが導かれる。n<0 のときは a = (|n|/(|n|-M))^{|n|/M} を既約な整数比表現 S/U と表記する ことで同様に R^{1/M} が有理数であることが導かれる。したがっ て、 R := s^M/u^M (s と u は整数、u>1、gcd(s, u) = 1) と置くことができる。このとき、1/(R-1) = u^M/(s^M-u^M) である。 gcd(u^M, s^M-u^M) = 1 であることから、u^M/(s^M-u^M) は既約な 整数比表現になっている。一方、1/(R-1) = n/M の右辺も既約な整 数比表現で M>0 であることから、|s^M-u^M| = M であることが導 かれる。 しかし、以下のように |s^M-u^M|>M であることが示せる。つまり、 1/(R-1) が整数でなく、a = R^{1/(R-1)} が有理数になるような有 理数 R は存在しない。 (1) |R|>1 のとき: |s|>u であることから |s^M - u^M| ≧ |s|^M - u^M = (|s|-u)(|s|^{M-1} + |s|^{M-2}u + |s|^{M-3}u^2 + ... + |s|^2u^{M-3} + |s|u^{M-2} + u^{M-1}) > 1×(u^{M-1}×M) ≧ M が成立する。 (2) 0<|R|<1 のとき: 0<|s|<u であることから |s^M - u^M| = |u^M - s^M| ≧ u^M - |s|^M = (u-|s|)(u^{M-1} + u^{M-2}|s| + u^{M-3}|s|^2 + ... + u^2|s|^{M-3} + u|s|^{M-2} + |s|^{M-1}) > 1×(|s|^{M-1}×M) ≧ M が成立する。 Q.E.D. (補足) 有理数 r に対して r = x/y = X/Y という 2 つの既約な整数比 表現がある(つまり gcd(x, y) = gcd(X, Y) = 1)なら、|x| = |X| かつ |y| = |Y|.
そうだ,せっかくはてなにミラーがあるんだから,TeX 記法でも書いておこう.以下の記述は,tDiary だとわけわかめなことになってるはず.mime TeX で整形された文書はここらへんの下の方参照.
有理数解は
(: 整数、)
に限る.
(証明)
a = 0 または b = 0 の場合は明らかに であることから である。
と置くと、a と b が有理数であることから R も有理数であり、。また、「」より「」であることが、R の定義より「b = Ra」であることがそれぞれわかり、
が導かれる。 より、a と b は以下のように定まる。
が整数であれば と は有理数。このときは であり、R が有理数だという条件にも反していない。したがって
は の有理数解を与えている。
次に、 が整数でなく、 が有理数になるような有理数 R が存在すると仮定する。以下、この仮定から矛盾を導き出す。
は有理数なので、 が の整数倍となるように2 以上の整数 m をとることができる。そのような m のうちで最小のものを M とする。
とすると、M の最小性より gcd(n, M) = 1 であり、。このとき、 が有理数になるのは が有理数のときに限る。実際、 のときは を既約な整数比表現 と表記すると、 で、両辺の分母も分子も整数の nM 乗である。、つまり と置くと
であり、 が有理数であることが導かれる。 のときは を既約な整数比表現 \frac{S}{U}] と表記することで同様に が有理数であることが導かれる。したがって、
(s と u は整数、、gcd(s, u) = 1)
と置くことができる。このとき、 である。gcd(, ) = 1 であることから、 は既約な整数比表現になっている。一方、 の右辺も既約な整数比表現で であることから、 であることが導かれる。
しかし、以下のように であることが示せる。つまり、 が整数でなく、 が有理数になるような有理数 R は存在しない。
(1) のとき: であることから
が成立する。
(2) のとき: であることから
が成立する。
Q.E.D.
(補足) 有理数 r に対して r = x/y = X/Y という 2 つの既約な整数比
表現がある(つまり gcd(x, y) = gcd(X, Y) = 1)なら、|x| = |X|
かつ |y| = |Y|.