佐藤雅彦研究室展

佐藤雅彦研究室展」@銀座 ggg に行って来た.大学の研究室が個展を開くなんてきいたことがない….

佐藤雅彦というと,「バザールでござーる」「スコーン」などの CM の印象が強い方が多いと思う.自分も CM から入ったクチで,98 年には氏の映画「kino」も観に行ったりしてたんだけど,なにげに最近の慶応 SFC での教育活動や「ピタゴラスイッチ」はすごい新境地だと思っている (毎朝 NHK で,「いつもここから」が謎の体操してたり,ラーメンズの 2 人がパントマイムや声優をやっているというだけでもなんだかよくわからんがすごい).



で今回の個展はそのエッセンスともいうべき内容で,digital,n 分木,ソート,など計算機科学や数理科学の概念をいかに視覚的表現に発展させていくか,という課題と,その解答としての学生の造形物や映像作品が展示されている.佐藤氏自身の作品はけっこう個性が強いのだけど(ぉ,学生作品主体ということでバランスのよい展示になってる.



彼らの作品の面白さは数理的概念が動きをもった映像として鮮やかに立ち現れてくるところであって (美の根源が見た目でなく「数学概念」に起因するところが,数学図形の芸術なんかとは違うし,またメディアアートとも違う),それはなんつーか,芸術的なプログラムコードを見た時の気持よさとか,最適性が保証されたときの高揚感とか,命令を 1 行ずつ実行していく計算機に対するいとおしさとか,そういうものにかなり近い気がする.この手の快感を,計算機をさわったこともない人や,小さな子供でも共有できる場として,彼らの作品群は貴重な存在だと思う.



今回の展示でも目玉だった NHKピタゴラスイッチ」の素材をみていて,あれって「関係性を教える」番組なのかもな,と思った.「おとうさんスイッチ」は因果関係を,「アルゴリズムたいそう」は相補性を,「アルゴリズムこうしん」はリスト構造や Markov 連鎖を,「つながりうた」は日本語の連鎖を,そして「ピタゴラ装置」は物理現象の因果関係の意外な面白さを伝えようとしてたりしてなかったりするんじゃなかろうか.



それと思ったのは,何らかの概念を視覚化して他人に理解してもらうというタスクは,ある意味自分の仕事のなかでも重要な要素を占めている.文章中の schematic な図の作成から PowerPoint のプレゼンまで,output の質は視覚表現に大きく依存する.そういう意味で,彼らの表現のわかりやすさ,本質性,意外性,なんかにかなり影響をうけた.今まで漫然と書いてた図も,もっと極めてみようかな.



なーんてヘリクツをこねなくても十分楽しめます.



ちなみに土曜だったんだけど人大杉.1 時間半の映像を,立ち見,寿司詰めで見るのはさすがにつらいって.あと映像作品が多くて意外と時間が掛かるので,時間をたっぷりとって行ったほうがよさげ.今回は時間がなくて短篇映像は見れなかった.