「繰り上がり足し算の脳内処理」への反応

なんか先日のエントリ「繰り上がり足し算をどう脳内処理してますか? 〜10 の補数 vs. 暗記〜」 [2007-01-25] に思いがけずたくさんの反応を頂いた.ありがとうございます.普段なかなか反応が来ないので素直に嬉しいです.しかも非常に興味深い話が集まりました.



まず,フケ顔男爵さんの反応.


補数派です。中学受験の際に四●●塚で習った気がする。言われてみると手間がかかっているのですが、私の場合、答えが 10 を越えてしまう足し算を1回やるよりも、 答えが 5 以下になる引き算を 2 回やる方が脳の負担が少なくて早いのですよ。
やはり世の中は補数派が主流でしたか….いや,マジで,補数で計算してる人尊敬します.頭の構造が違うのかな.

補数はむしろ掛け算の暗算に役立ちます。 たとえば 28 × 29 = ? なんてのが出てくると普通は紙に書くか電卓を探すかですが、歩数を使えばあら簡単。28 × 29 = (30-2)×(30-1) = 30^2 - 30 ×(1+2) + 2 = 812。掛け算は 10 が出てくると俄然簡単になるので補数大活躍というわけです。
あー,これ,「ドラゴン桜」にも出ていました.他にも 17× 23 = (20 - 3) × (20 + 3) = 20^2 - 3^2 = 391 とかこの手の受験テクニック.これ読んだ時「すげ−! でもこんなの思いつかね−よ!」と思いました.「ドラゴン桜」って編集担当が東大卒で,自分の受験テクニックを紹介してるらしいので,受験テクニックとしては定番の部類なんだろうかこれって.



上記のエントリに対するすどさんのツッコミ

場合の数で,式が 13×11×9 になったので,生徒に「これは簡単に暗算できるからやっちゃおう」と言ったら 13×11 を必死に始めるわけですよ。で「ちょっと待った 13×(100−1)だよ?」って言ったら「そんなの絶対気づかないよ〜」だって。彼女はセンター数学で 9 割取るくらいの実力なんだけど,それでも補数はすぐには思い浮かばないみたい。
もそうなんですが,いや,ほんと,そんなの絶対気付かんわ orz.そういう人でもセンタ−で 9 割取るというのがせめてもの救いですが….



ちなみに,自分も中学受験したんだけどな? おかしいなwwww.まあ,あまりレベルの高くない中学を目指してたし,塾に行き始めたのも小 6 の途中からだし,その塾もあまりそういうテクニックは教えてくれなかったので,いわゆる受験テクニックはほとんど知らないんですよね.だからこそ「ドラゴン桜」が面白く読めるわけなんだけど.



続いて,AC さんのツッコミ

10の補数を使うのは、算盤のやりかたにとらわれているからかもしれませんね。算盤というレジスタが目の前ないし脳内にあることが実は前提になっているのかも。
なるほど,そろばんは実質的に 10 の補数を計算してることになりますね (←そろばんの使い方を全く忘れていたので急いでぐぐってみた人).もしかしたら「10 の補数」方式はそろばんがル−ツかも知れないし,日本固有の教え方なのかも知れない.

繰り上がりのある1桁の足し算について、他に、「小さい方の数の2倍をして、大きい方と小さい方の差を後で足す」というやり方で脳内処理している人がいるようです。(7 + 6 = (6 * 2) + 1 = 13) ←足し算を完全にマスターする前に2の桁の九九を覚えた人?
言われて気がついたんですが,自分はこの方式も脳内採用してました.ただし 2 数の差が 1 の時に限ります (7+6 とか,8+9 とか).考えるに,どうも 6+6 とか 8+8 とかの結果には自信があって ( 6×2 や 8×2 が使えるからか?),「6+7…え−と,6+6=12 で,それより 1 大きいはずだから,13!」という感じの処理を脳内でやってます (ひでえ).というか,7+6=13 の暗記テ−ブル法と,この方式とが,脳内でパラレルに走って照合されてる気がします.

自分の脳はどうも暗記だけでは自信がないらしく(笑),裏で他の処理が走って照合をとってるふしがあります.奇数と奇数の和だから偶数にならなきゃおかしいとか,9+7 は 17 より 1 小さいはずだとか (…なんか 9+[1-9] に関しては補数式使ってるようではある.謎).



続いてかがみさんの方式.

どう習ったかはちっとも覚えてませんが,私の脳内では「補数で計算する」というイメージが「暗記」されているようです.ここでいうイメージってのが本当に文字通り視覚的なもので,例えば「8 + 7」だったら,7 がピョンと飛び上がって宙返りして,8 の右上あたりに半分くらい吸い込まれて,5 が残る映像が見えます.いや比喩ではなく本当に.吸い込まれる場所も,宙返りするかどうかも数字によって決まってるっぽいです.
すげえ.何か脳の構造が違う.

ていうか,こういう「数学やロジックが視覚的に見えたり体感できたりする」人って自分の周囲にもけっこういるんですが,自分はどうしてもその境地には至れません.自分の職場にいる複数の人間の話によると,「自分が数式やプログラムになって何かを処理している夢」を見たり,「LSI になって何やら電気信号を処理している夢」を見たりするそうです.それで夢の中でコードにバグがあって自分自身の矛盾に苦しんだりしているそうです.そのくらいプログラムや回路のことを考えてやっと一人前なのかも知れませんが,一生たどりつけない気もします.



このあたりでかなり落ち込んできましたが,sshi さんのはてブコメントを読んでようやく安心.

あ。おなじおなじ。7+8->15はテーブル引いてる。
良かったあああ.テーブル派の人がいた.しかもなんかプログラムばりばり書ける方らしい.こんなすごい人でもテーブル派だよ.いやー良かった.



それにしても色んな人の脳内処理を聞いてみると結構面白いなあ.はてなで聞いてみたいw.ちょっと前に,「脳内で数字の処理を行っている部位が特定された」っていう楽しいニュースがあったが繰り上がりの足し算の処理も fMRI で見てみたい.



追記: deep_breath さんからも反応頂きました.補数派だそうです.しかも視覚派.しかしその奥様は暗記派だそうで,大変心強い限りwwwww

自分の場合は8が7を掃除機のように吸い込んでしまい、

ちょうど5の分だけちぎれて転がってる、という風な感じ・・・
こういう脳内イメージ湧く人ってなぜかうらやましいです.

「63 - 28」ならば、28を足して63になる数は…35だ、

ってのが一瞬で検索されて出てくる感じ.

その一瞬の検索アルゴリズムの中身は良く分からないけど.

イメージ的にはスロットが回っていて、

まず10の位が3でとまり、次に1の位が5で止まるのが見えてます.

なんなんだか.
ほえー.

やっぱみんなすげえわ.ていうか自分がほんとダメに思えてくるわ.「63 - 28」? えーと,3 から 8 は引けないから隣から 10 を借りてくるんだよな? で 13-8=5 (テーブル).で,10 の位は 1 つ減って,5-2=3.で,あれ? 1 の位なんだったっけ? あ,5 か.ってことは,答えは 35.…で合ってるかな? (軽く 5 秒).死ねる.



追記 2: てらさわさんからも反応頂きました.ひゃあ.何このフィーバー.ありがとうございます.

繰り上がりのある足し算を私は下図のように処理しているようである。
図解での説明,どうもです.だいたいにおいて暗記,一部を補数に頼る,という意味では,自分と似ている気がします.パターンは若干違っていて,自分の場合は上述したように 9 に何か足す場合に補数に頼っています.てらさわさんのようなデキる方が暗記メインというのは,なんかこう,ものすごく自信が湧いてきました.

・かけ算の九九について、対称性を利用して片方しか覚えていないもの (たとえば、 9×3 を見たら、 3×9 に変換してから答えるというような) はどれか。

・かけ算の九九を記憶から呼び出すとき、音声を鍵として呼び出すか、あるいはイメージを鍵として呼び出すか。
うーむ.音声呼び出しは可能だし,かなり信頼性高いんですけど,処理が遅いのであまり使いません.イメージ呼び出しに近いんだけど,かがみさんや deep_breath さんのように数字が視覚的に見えるわけではなくて,純粋に数が数として即座に呼び出される.シンボル呼び出しとでも言うんでしょうか.音声も映像も介在してない気がします.しかも,そこでは 2 数の順序はまったく考慮されず同等に扱われてるようで,9 × 3 も 3 × 9 も全く差を感じません.

ただ,まだ九九を習い立ての頃,いろいろと関連づけしたり,イメージや音声に頼ったりしていた記憶はあって,それをなんとなく思い出すことはできます.



ダメだ.この話題,自分で振ったわりには面白すぎる.引続き反応お待ちしております (もうそろそろ読者が飽和状態な気もしますが).というかけっこう知合いの方々が読んで下さってるんだなあと嬉しい驚き.



追記 (2007-02-06): な,なんと,反応して下さってる方を他にも見つけました.ikazoike さんです.といっても実はうちへの言及は全くないので,反応してくださってるわけではないかも知れないけど,先日うちの記事を引用して下さったりなどなどしてることから,多分うちへの言及なき反応だと勝手に解釈しました.いやーありがとうございます.

 
 
ex.)6+7=13
 
7←○○○○○○
 
7,○←○○○○○
 

 
7,○○○|←○○○     13か…
 
おお,なんか新方式ですかね.補数に似てるけど,加点法っぽいところがちょっと違うのかな.欧米のお釣りの計算の仕方に近いか.

9+「なんとか」のたしざんは「何とか」のほうが一個減るから10+「何とか」-1という計算をしているのは明らかだから???やっぱそうかな。わからん。後よくやるのは8+6とかが苦手なのでそれの近辺9+6とか8+7とかと比べて一個前とか言うように考えていたりもする。得意な近辺から類推。あるいは8+6=9+5とか6+7=5+8みたいに繰り上げがしやすい形に瞬時に変換するようなそういうような。はっきりと意識してないからパターン認識かもしれないけど。
なるほど.ローカルルールは人それぞれで面白いなあ.10+「何とか」-1,ってのはわりと使用人口多そうですね.



引続き,反応お待ちしています.つーか,なんか今までの方々は多分だいたい理系だし,しかもとある特殊なコミュニティの中の人間が大半を占めてるので(笑),根っからの文系の人とかの思考も知りたい.




追記 (2007-02-13):

そういう変人と一緒にすんなと声を大にして言いたい(ぉ
すいません.ていうか追記に気付くの遅すぎだ>自分

彼らはやはり変人なのか…わりと普通の人の部類に入ると思っていたんだが.うちの職場にいるとだんだんいろんなものが麻痺して来るよ…orz



追記 (2007-04-03): baby_touch さんと kensuke1108 さんからトラックバックを頂きました.ありがとうございます.baby_touch さんはなんと「大量の東大生」を相手にこの問題を調べて下さったそうで…おおお,感動.

・・・聞いてみたところ分かれる分かれる,補数派・テーブル暗記派・それら2つのハイブリッド派.こんなに綺麗にてんでばらばらになるのか!?というくらいばらばら.
東大生にも暗記派が少なからずいるらしいという事実,心強い限りですな.

ちなみに私は『ビジュアルベースの補数派』で,8+7だと8が7の一部をショベルカーのように削り取って10になり,5が残る感じ.ただ,5+6だと6が5に揃うようにちょん切られて5が2個できて10になって,残りの1で11,という感じになるので,5に揃える感覚もあるらしい.
なるほど.同じビジュアルベースでもその内容が人によって違うのが面白いですよね.ショベルカーだったり掃除機だったり….

kensuke1108 さんはどうやらハイブリッド派ですか.かなり細かくルールが分かれているようで,最適化っぽいものを感じますね.追記 (2007-09-19): さらに新方式登場! 個人的にメール頂いたのですが,非常に面白い方式だと思いますので,許可を得て転載します.考察もなかなか興味深いです.計算機アーキテクチャの例題になるかも??

ブログの該当エントリにコメントすべきなのかもしれませんが,おもしろかったので,自分が10までの加算の暗算をどうやってるか考えてみました.すると,[6-8]との足し算で桁上がりがある場合は,[6-8]を 5+x に分解して,xともう一方の足し算をやっています.



例えば7+8 の場合,(5+2)+(5+3)=10+(2+3)=15という感じです.5以下の足し算しか覚えられなかったということでしょうか?とにかく,5以上の一桁の数は,「5+x」という風に,脳内ではイメージされています.暗算中は,5を単位にしたブロックが,脳内で高速に分離合体しています.



ただし,ややこしいのは,9だけが例外処理になっていて,9を足すと1桁目が1減る,というルールで演算しています.例えば,24+9の場合,24を基準に考えて,まず2桁目が桁上がりして「20→30」になる一方,「24」の一桁目の「4」が一つ減って「3」になるので,「30」と「3」で「33」です.どうもかったるいですね.いつも9足す時は,半信半疑で計算している自分がいます.



こうやって書いてみると,頭悪いんじゃないかと思うくらい,ややこしいことやってますね.意識したことなかったので,非常におもしろいです.nao さんのように,全部覚える,ってのが,一番合理的な気がします.ここらへん,FPGAの回路設計のセンスなんですが,演算は,全部ROMでテーブルにしてしまうのが,一番楽ですよ.リソースさえ許せば...

どれくらい,演算の種類があるんでしょうかね.「加算器を使わないで足し算の回路を設計しなさい」という問題になるんですかね.例えば,極めて基本的な解法として,カウンタを使う方法で,まず加算数をプリセットして,次に被加算数分をカウントしていけば,足し算の演算ができます.これは,子供が一番最初に,指折り数えて足し算する方法と同じですね.各機能要素(メモリやレジスタや条件分岐の演算器)ごとの,処理速度と回路規模を与えれば,どの方法が最適なのか,比較できそうですね.全然おもしろそうじゃないけど.

念のため,修正して整理しておくと,

1桁どうしの桁上がりのある足し算で,
  • 9を足す場合:桁上げして,1桁目から1引く (9+7 = 17-1)
  • 同じ数どうしの場合:2倍する (8+8=8*2)
  • 上記以外の場合で
    • 5以上+4以下の場合:10の補数 (7+4=(7+3)+1)
    • 5以上+5以上の場合:5+x に分解してxどうしを足す (8+7=(5+3)+(5+2))
5はひとつのブロックとして意識されていて,脳内イメージで固まりとして,分離,合体しています.小さい頃よく遊んでいたダイヤブロックの影響かなー.
追記 (2008-01-03): ここへの反応というわけではないですが,あの森博嗣氏はどちらかというと暗記派のようです.これは心強いwwww
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